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谷崎潤一郎 『AとBの話』 初版本・大正10年・新潮社・函

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対立する藝術家同士による分身譚「AとBの話」。
この『AとBの話』は二人の作家AとBの話である。悪い作家Bが小説が書けなくなり、良い作家Aに小説を書かせて自分の名前で発表するという話である。
他人の作品を自分の作品として発表することがないかといえば、そんなことはない。太宰治と井伏鱒二には互いの作品を交換して発表したという疑惑があり、川端康成の『眠れる美女』は三島由紀夫作だという疑惑もある。「乙女の港」は添削したものである。(中略)
それにしても自分の大切な作品を他人に譲るなんてことはないんじゃないかと思った途端、佐藤春夫と「せい子」との間の小田原事件(谷崎が妻を佐藤に譲渡した事件)を思い出す。この作品の公表された大正十年六月といえばまだゴチャゴチャしていた時期である。
【小谷野敦氏(『谷崎潤一郎伝-堂々たる人生』の茶者) による】


谷崎潤一郎「AとBの話」水島爾保布装幀
谷崎潤一郎の短編集「AとBの話」新潮社版の函欠本。谷崎潤一郎と水島爾保布のコンビでは、やはり同時期に出版された「人魚の嘆き・魔術師」が有名だが、こちらも結構珍しい。4~5万円もする垂涎の一冊(※Amazonに¥41,720円で出ています)、ぼろぼろの安価本ながら手にとって読めるのがうれしい。中編「AとBの話」は、善人と悪人が互いに依存しながら共生し滅びるという観点的な内容で、大谷崎でも初期はこうした作品を書いたのかと(ちょっと)安心する。(中略)
藍染めの布装幀で大正時代の造本は見事のひと言ですが、裏返せばこうした造本が日常できたほどに職人手間が安かったともいえる。江戸・明治・大正の職人たちは生活のために、延々と地味な作業にいそしんだ。光と蔭ですね。見たところ、本のどこにも水島爾保布のクレジットは入っていないが、ご覧のごとくで彼の装幀であることに間違いはない。本当にのんびり意匠しているように思えるのですが、いい感じですね。(みずすまし亭通信)

新潮社・大正10年10月初版発行の谷崎潤一郎『AとBの話』函付きです。ヤケが少しありますが、シミや書き込み、蔵書印などもなく函、本体とも造りは確りとしており、経年の割には状態は良いと思います。
103年前の古書であることをご理解の上、購入の検討をお願いいたします。

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